転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


125 ちゃんと使い方を調べないとダメなんだね



 周りにはいっぱい皮がある。だからこれだけの数に魔法をかけられるはずが無いって言うのは当たり前だよね。

 だから僕の考えてる事は間違って無いはずなんだけど、じゃあ何に引っかかったんだろう? そう考えた僕はもう一度ドライと言う魔法がどんな物なのか、ステータス画面を開いて説明を読んでみたんだ。

 そしたらそこにはこう書かれてた。

 野営時に切ったばかりの木や掃ったばかりの枝にかけて薪にする時などに使う。

 うん、これはさっきも読んだ。だから僕は乾燥させる魔法なんだから木だけじゃなく皮も乾かせるんじゃないかって考えたんだよね。

 じゃあ僕が引っかかったのはこれじゃないのかなぁ? そう思って何度もこの文章を読み直したんだ。

「あっ!」

「どうしたんだ? ルディーン。変な声を出して」

 そしたら僕は、やっと何に引っかかってたのか気が付いたんだ。

 そうだよ。掃った枝にドライをかけて薪にするって言うのなら、一本ずつにしかかけられないはず無いんだよね。だって、それだったら焚き火をするだけの枝全部を乾かす事なんてできないはずだもん。

 と言う事は、このドライって魔法ってひとつの物にかける以外の使い方があるはずだよね? だったらきっと。

 そう思った僕は、ドライの説明文の所を指でタッチしてみたら、思った通り次のページが開いてそこに別のやり方が書いてあったんだ。

「へぇ、何かの入れ物に入れれば範囲指定する事でその中全部を乾かすなんて事もできるんだ」

「入れ物に入れる? って、またか。おーい、ルディーン」

 このドライって魔法、やっぱり別の使い方があったんだよね。おまけに、このページにはこれ以外の説明も書いてあったんだ。

 これによると、なんと乾かす力も変えられるみたい。

 最大でどれくらいの量を乾かせるのかは本人の知力や精神力の数値次第らしいんだけど、それより少ないならどの程度まで乾かすのかは自分で調整できるみたいなんだ。

 でもそうだよね。一般魔法って生活を楽にする為の魔法って設定なんだから、その調整ができないとおかしいもん。

 だって薪を作るにしても、木の枝の水分が減りすぎてぽきぽき折れちゃうくらいまで乾いちゃったら、使い物にならないからね。

「う〜ん、この状態になったら下手に触らないほうがいいかな? 今までの感じからすると、考えさえ纏まれば元に戻るだろうし」

 じゃあ今回はどうしたらいいのかなぁ? 僕がさっきドライをかけた時はびしょびしょの皮がちょっと濡れてるくらいになたけど、お父さんやお兄ちゃんに濡れた皮を絞ってもらったり、ちょっとだけ干してもらったのを入れ物に入れてかけたら乾かないかなぁ。

 あっ、そうだ! 一度で乾かなかったら、もう一度かければいいんじゃないか。ん? でも待って。そしたらまたさっきみたいにからからになっちゃうかも。

 う〜ん、やっぱり一度やってみないとダメだよね。

 いくら考えてても解んないし、それより一度やってみたほうが早いよねって気が付いた僕は、お父さんにそう言ってみる事にしたんだ。

「ねぇ、お父さん。やってみたい事があるんだけど」

「おっ、帰って来たな」

 ???

「帰って来た? お父さん、僕、どこにも行って無いよ。ずっとここに居たでしょ?」

「いや、こっちの話だ。気にするな。それで、何をやってみたいんだ?」

 変なお父さん。

「えっとね、乾かす魔法だけど、何かの入れ物に入れたらその中のが全部乾くみたいなんだ。でも、びしょびしょだとさっきみたいに乾かないから、お父さんとお兄ちゃんたちが絞ったやつとか、ちょっと干したやつを入れ物に入れて魔法をかけてみたいんだけど、いい?」

「おっ、そんな方法を使えば一度にたくさん乾かせるのか。おお、いいぞ。作業が楽になるなら大歓迎だ」

 お父さんがいいって言ってくれたから、実際にやってみることに。

 お母さんが洗濯物を干す時にいつも使ってる籠を僕が持ってくる間に、お父さんやお兄ちゃんたちにはちょっとでも乾くようにってびしょびしょの皮を絞ってもらったり、その皮をちょっとだけ干してもらったりしたんだ。

 そしてその皮を持ってきた籠に入れてもらうと、僕はその中を指定してドライの魔法をかけたんだ。そしたら、さっきびしょびしょの皮にかけた時と同じくらい乾いたんだよね。

 びしょびしょでもちょっと乾かした物でも同じって事は、もしかしてこのドライって基本はかけたものをこれくらいまで乾かす魔法なのかも。

 そう言えば木を乾かして薪にする魔法って書いてあったし、これくらいが乾きすぎてないけど火はつけやすいって言うのならそれも納得なんだよね。

「おいルディーン。これ、さっきのと同じくらいなんじゃ無いか?」

「うん。僕もそう思った。これってきっと、僕がもっと乾けって思って魔法をかけたら、もっとよく乾くんじゃないかなぁ?」

 説明にはどれくらい乾くかは本人の知力と精神力次第って書いてあったし、多分調整が効くと思うんだよね。

 と言う訳で、再挑戦。今度はもっといっぱい乾けーって思いながら魔法をかけたんだけど、

「ルディーン、やりすぎだ。からからじゃないか」

 今度は最初に乾きかけの皮にかけた時みたいにからからになっちゃった。

「う〜ん、調節のやり方がよく解んないや」

「そうか。なら今日はさっきのやり方でいいんじゃないか? 魔法であれだけ乾かせるのなら、それだけでも助かるからな」

 と言う訳で僕がお父さんが籠に入れてくれたびしょびしょの皮にドライの魔法をかけて、その皮をお兄ちゃんたちが干して行く事に。そしたらあっと言う間に作業が進んだんだけど……。

「この方法だと、もっと干す場所が必要だな」

「うん。これだと乾かないもんね」

 当然魔法で乾かす方が早いもんだから、結局干し場がなくなっちゃったんだよね。

 やっぱりドライの魔法の調節、できるようにならないとダメかも。そうしないと、この皮をなめす時に困っちゃうもん。

 だから僕はそうお父さんに言ったんだけど、

「なめした革を乾かす時は皺にならないよう引っ張りながら乾かすから、籠になんて入れて乾かせないそ」

 って言われちゃった。

 そっか、じゃあ練習しても意味無いね。

 僕はお父さんの話を聞いて、この時はそう思ったんだけど、

「そんな便利な魔法があるの? ならこれからは、雨が降ってもお洗濯ができるわね」

 その日の夕ご飯の時にこの魔法の話を聞いたお母さんから、こんな事を言われちゃったんだ。

 と言う訳で結局僕は、乾かしすぎて服が傷んじゃわないようにって丁度いいくらいに乾くようになるまでドライの練習をする事になったんだ。


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